林 桃子
消費者も考えなければなりません。まっとうな本です。
僕の同窓生がSNSで紹介していたので、読んでみました。
著者の松永和紀さんは科学ライターで、農業についての著述も手掛けています。
この本は単純に『気分のエコ』で農業を語るのではなく、育成に使われる石油やCO2排出量からも評価されるべきだと書かれています。
そもそも農薬や化学肥料がどうしてできるようになったのか、その必要性も含めても書かれています。
マスメディアで取り上げられた事柄に対し、エビデンスを示して批判しています。このエビデンスを示す点が特に重要です。
最終章では消費者に求められることが3つ挙げられています。
(1) 安全と安心を区別して判断する。
(2) 食べ残しなどの廃棄量を減らし、食生活を見直す。
(3) 科学的根拠の短絡的な批判をやめ、多様な生産方式を認める。
「安全」と「安心」は異なるものです。科学的根拠に基づく「安全」と、感情による「安心」です。「安心」のために多くの食品が廃棄されてしまっている現状は消費者にとっても厳しい話です。
この本を読むと、私は消費者として啓発される点が多かったです。誤解を解いてくれる信頼できる本だと感じます。
消費者として自分たちの欲求を無理に通すのではなく、科学技術や農業をさまざまな視点から見るべきだと考えられます。
その中では様々な農業方式が存在することが望ましいです。遺伝子組換えもその一つです。ただ単に拒否するのではなく、自身で調査する意欲も必要です。
SNSを見ていると、短絡的な発言をする人もいますが、このような本はある意味で啓蒙書だと思います。
私は全てに賛成というわけではありませんが、読んで良かったと感じました。
松永さんは科学ライターとして素晴らしい仕事をされていると思いました。発行は2011年なので内容的には少し古いかもしれませんが。